「水分は取りたい。でも夜のトイレが心配…」高齢者の夏の水分補給を考えてみました
最近は、朝になると地域の防災無線で熱中症への注意が呼びかけられることも増えました。
「こまめに水分を取りましょう。」
「エアコンを適切に使いましょう。」
そんな放送を耳にする機会も多いのではないでしょうか。
また、テレビをつけてチャンネルを回していると、どこかの番組で一度は「水分補給を忘れずに」と言っているような気がします。
それだけ日本の夏は暑く、熱中症への注意が必要な季節なのかもしれません。
暑い日が続くと、私も家族に「ちゃんと水を飲んでね」と声をかけたくなります。
ところが、年齢を重ねた方からは、
「水を飲むと夜中に何度もトイレへ行くことになる」
「眠れなくなるのがつらくて、夕方からは水を控えている」
という話を聞くことがあります。
熱中症は心配だけれど、夜のトイレも増やしたくない。
どちらも切実な悩みですよね。
夏だからと無理に大量の水を飲む必要はなさそうですが、トイレが気になるからと極端に我慢するのも心配です。
そこで今回は、高齢者の夜間頻尿と夏の水分補給について、公的機関や専門学会の情報を参考にしながら調べてみました。
夜中のトイレが増えるのは、水分だけが原因とは限りません
眠りについてから、排尿のために1回以上起きることを「夜間頻尿」といいます。
国立長寿医療研究センターの調査では、男女ともに年齢が高くなるほど夜間頻尿がある方の割合が増え、回数も多くなる傾向が示されています。
ただし、原因は単純に「水を飲みすぎたから」とは限りません。
年齢とともに膀胱にためられる尿の量が少なくなったり、睡眠が浅くなって目を覚ましやすくなったりすることがあります。
前立腺肥大症や過活動膀胱、糖尿病、睡眠障害、服用している薬などが関係する場合もあります。さらに、日中に脚にたまった水分が横になることで血管へ戻り、夜間の尿量が増えるケースもあるようです。
日本泌尿器科学会も、夜間頻尿には「夜に作られる尿が多い」「膀胱に十分な尿をためられない」「眠りが浅い」など、いくつもの原因があると説明しています。
夜中にトイレへ起きる回数だけで、原因を決めつけることは難しそうです。
気になる場合は、数日間だけでもトイレへ行った時間やおおよその尿量、飲み物を取った時間を記録してみると、受診時にも説明しやすくなります。
夜のトイレを心配して水を我慢しすぎるのも注意
「夜に起きたくないから、夕方から何も飲まない」
そうすればトイレの回数は減るかもしれませんが、暑い季節には別の心配も出てきます。
高齢になると、若い頃よりも喉の渇きを感じにくくなり、体内に保持できる水分量も少なくなる傾向があります。
そのため、自分では喉が渇いていないつもりでも、体は水分を必要としていることがあります。
環境省の高齢者向け熱中症対策では、喉が渇いていなくても、こまめに水分を取ることが勧められています。一般的な目安として、食事に含まれる水分とは別に1日約1.2リットルと紹介されていますが、必要量は体格や汗の量、病気、薬の内容などによって変わります。
一方、国立長寿医療研究センターは、必要以上に水分を取れば、その分だけ尿量が増えて頻尿につながることがあると説明しています。脱水は避けなければなりませんが、「血液をさらさらにするため」などの理由で無理に大量の水を飲む必要はないとされています。
つまり、夏の水分補給は「多ければ多いほどよい」というわけでも、「夜のトイレが心配だから飲まないほうがよい」というわけでもなさそうです。
日中に少しずつ飲んで、夜にまとめ飲みしない
夜間頻尿が気になる方は、1日の水分を夜にまとめて取るのではなく、比較的早い時間から少しずつ補う方法が取り入れやすそうです。
例えば、朝起きたとき、朝食や昼食のとき、午前と午後の休憩時、入浴の前後など、生活の区切りに合わせて飲む習慣をつくります。
一度に大きなコップで何杯も飲むより、小さめのコップで何回かに分けたほうが、無理なく続けやすいでしょう。
反対に、日中はほとんど飲まず、寝る直前になって慌ててたくさん飲むと、夜間の尿量に影響する可能性があります。
夕食後のコーヒーや濃いお茶、晩酌が習慣になっている方は、飲む時間や量を一度見直してみてもよいかもしれません。カフェインやアルコールは、人によっては尿量を増やしたり、眠りを浅くしたりすることがあります。
ただし、「寝る前は一滴も飲んではいけない」ということではありません。
喉が渇いているとき、入浴後に汗をかいたとき、寝室が暑いときなどは、体調を見ながら少量ずつ補うことも必要です。
普段の飲み物には、水や麦茶などが選びやすいでしょう。大量に汗をかいたときは、体の状態によって塩分も必要になる場合がありますが、塩分制限を受けている方は自己判断で増やさず、医師に確認するほうが安心です。
夜間頻尿を「年齢のせい」だけで済ませないことも大切
夜中に1回程度トイレへ行っても、日中の生活に支障がなければ、それほど困らない方もいるでしょう。
一方で、毎晩何度も起きてよく眠れない、昼間も強い眠気がある、急に回数が増えたという場合は、一度かかりつけ医や泌尿器科へ相談したほうがよいこともあります。
尿が出にくい、排尿時に痛みがある、血尿が出る、強い喉の渇きや脚のむくみがあるといった症状も、診察を受けるきっかけになります。
心臓や腎臓の病気などで水分量を指示されている方は、一般的な水分量をそのまま当てはめず、医師の指示を優先してください。
夜間頻尿は、水分の飲み方だけでなく、病気や薬、睡眠などが影響している場合があります。自分だけで「飲みすぎたせい」と決めつけないことも大切です。
まとめ
夜のトイレが気になると、水を飲むこと自体が不安になってしまいます。
けれども、日本の夏は、室内で静かに過ごしているだけでも汗をかくことがあります。特に高齢者は喉の渇きに気づきにくいため、我慢しすぎるのも心配です。
まずは日中の早い時間から少しずつ飲み、寝る前のまとめ飲みを避けることから始めてみてはいかがでしょうか。
そして、夜中に何度も目が覚めてつらいときは、「もう年だから仕方がない」と諦めず、記録をつけて医師に相談してみるのも一つの方法です。
水を何リットル飲むかだけではなく、「いつ、どのくらい飲んだら自分の体が楽なのか」を見つけることが、夏を無理なく過ごす助けになりそうです。
参考資料
・環境省「高齢者のための熱中症対策」
・環境省「熱中症環境保健マニュアル」
・国立長寿医療研究センター「頻尿の原因は?」
・国立長寿医療研究センター「夜間のトイレ 何回行きますか【夜間頻尿】」
・日本泌尿器科学会「夜間、何度も排尿で起きる」




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