高齢の父が物を捨てられない理由。実家へ帰るたびに考えること
昔は家族4人で暮らしていた家が、物でいっぱいになりました
実家へ帰るたびに、物が増えていました。
父は現在、一人暮らしをしています。実家はもともと、父と母、私、妹の4人で暮らしていた家です。
昔は4つの部屋それぞれに家族の生活がありました。しかし今は、母は地方の家で暮らし、私と妹もそれぞれ独立しています。現在、この家で暮らしているのは父一人だけです。
家族が減れば、家の中の物も少しずつ減っていくものだと思っていました。
ところが、実際は反対でした。
久しぶりに帰るたび、空いていた場所に箱が置かれ、棚の上にも新しい物が増えています。以前は歩きやすかった部屋にも物が置かれ、気づけば4つある部屋のほとんどが荷物でいっぱいになっていました。
「また増えている……」
実家に入るたび、思わずそう感じます。
何年も使っていない日用品、古い家電の付属品、空き箱、工具、書類、用途のよく分からないコード類なども残っています。私から見ると、もう使う機会はなさそうな物も少なくありません。
「これはもう捨ててもいいんじゃない?」
そう聞いても、父の答えはいつも同じです。
「もったいないから捨てられない」
壊れている物でも、長い間使っていない物でも、父にとっては簡単に処分できる物ではないようです。
父も年齢を重ね、以前より掃除や重い物の移動が大変になっています。物が多くなるほど床や棚の掃除もしにくくなり、片付けようとしても、どこから手をつければよいのか分からなくなるのかもしれません。
普段の燃えるごみやペットボトル、缶などは、父もきちんと分別して出しています。
一方で、小型家電、古い寝具、粗大ごみ、金属が混ざった生活用品など、捨て方がすぐに分からない物は、そのまま家の中に残りやすいようです。
自治体によって分別方法や収集日が異なり、申し込みが必要なごみもあります。「これは何ごみなのか」「どこへ持っていけばいいのか」と迷っているうちに、後回しになってしまうのでしょう。
私も実家へ行くたびに、小さな物を一つだけ持ち帰って処分することがあります。
「これくらいなら、なくなっても気づかないかな」
そう思いながら袋に入れたり、車に運んだりすることもありました。
本当は一度ですべてきれいにしたいと思っています。しかし、父の物を本人に黙って処分することには、今でも少し複雑な気持ちがあります。
私には不要に見えても、父には思い出や愛着があるかもしれません。家族だからといって、勝手に捨ててよいとは限らないと感じるようにもなりました。
「もったいないから捨てられない」父の言葉を考えました
以前の私は、「使わないのに、なぜ捨てないのだろう」とばかり考えていました。
けれども、高齢者の住まいや転倒予防について公的機関が公開している資料を読むと、実家の片付けは、単に本人の性格だけで説明できる問題ではないように感じました。
年齢を重ねると、重い物を持ち上げたり、ごみ置き場まで運んだりすることが難しくなる場合があります。分別方法を確認し、収集日を覚え、必要であれば自治体へ申し込むという一連の作業も、大きな負担になることがあります。
厚生労働省では、高齢者の転倒予防に関する情報を公開しています。また、消費者庁も高齢者の家庭内事故について注意を呼びかけています。
物が多いだけで必ず事故が起きるわけではありません。ただし、床に物が置かれていたり、通路が狭くなっていたりすると、つまずきや転倒につながる可能性があります。
特に一人暮らしの高齢者の場合、転倒してもすぐに家族へ知らせられないことがあります。実家の片付けは、見た目をきれいにするためだけではなく、安全に暮らせる環境を整えるという意味でも大切なのだと思います。
だからといって、家族が突然すべてを捨てようとすると、親子げんかになってしまうかもしれません。
「全部いらないでしょう」
「こんな物、残しておいても仕方がないよ」
このような言い方では、本人が責められていると感じる可能性があります。
まずは、捨てるかどうかをすぐに決めるのではなく、物を三つに分ける方法が取り組みやすそうです。
今も使っている物、しばらく考える物、処分してもよい物です。
一日で家全体を片付けようとせず、今日は棚一段だけ、次は箱一つだけと範囲を小さくすることも大切でしょう。捨て方が分からない物は、家族が自治体のごみ分別表を確認したり、粗大ごみの申し込みを手伝ったりするだけでも負担を減らせます。
「捨てなければならない」と迫るのではなく、「これはこれから使う予定がある?」「同じ物が二つあるけれど、どちらを残そうか」と一緒に考えるほうが、父も受け入れやすいのかもしれません。
今でも実家へ帰ると、正直、全部きれいに片付けたくなります。
それでも最近は、「どうして捨てないの?」と考えるより、「どうすれば父が無理なく整理できるだろう」と考えるようになりました。
物を手放すことは、私が思っていた以上に大きな決断なのかもしれません。
次に実家へ行くときは、勝手に持ち帰るのではなく、まず父と一緒に箱を一つ開けてみようと思っています。
一度にすべてを変えることは難しくても、一つずつなら進められるかもしれません。父の気持ちを大切にしながら、安全に暮らせる家に少しずつ近づけていきたいです。
今回参考にしたもの
厚生労働省「高齢者の転倒予防に関する情報」
消費者庁「高齢者の家庭内事故に関する注意喚起」
各自治体が公開している家庭ごみの分別・粗大ごみ収集案内
※本記事は、筆者の家族の体験と公的機関が公開している情報をもとにまとめています。物を捨てられない理由や生活状況は人によって異なります。ごみの分別方法や収集ルールについては、お住まいの自治体の最新情報をご確認ください。




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