高齢者の薬の飲み忘れ対策。父が薬袋に引く一本の線から考えました
「今日の薬、もう飲んだかな?」
毎日薬を飲んでいると、ふと分からなくなることがあります。
特に朝・昼・夕と飲む時間が分かれていたり、複数の病院から薬を処方されていたりすると、きちんと管理しているつもりでも、うっかり忘れてしまうことがあるかもしれません。
私の両親も病院で処方された薬を飲んでいますが、服薬管理の方法は二人でまったく違います。
父は薬を飲むと、病院でもらった薬袋にその日の日付を書き、ボールペンで一本の線を引きます。薬袋のすぐ横には、いつもボールペンが置いてあります。
最初に見たときは、「そこまで細かく書かなくても分かるのでは?」と思いました。
ところが父にとっては、その一本の線が「今日はもう飲んだ」という印になっているようです。袋を見ればすぐ確認できるので、「飲んだかどうか分からない」ということも少なくなります。
一方、母は薬を飲み忘れても、「今日は忘れちゃったけれど、次からまた飲めばいいかな」という、少しおおらかなタイプです。
同じ家族でも、薬との向き合い方はずいぶん違います。
父の方法は本当に飲み忘れ対策として役に立っているのか。ほかにはどのような方法があるのか。家族としてできることも含めて調べてみました。
高齢者の薬の飲み忘れは、なぜ起こるのでしょうか
薬を飲み忘れる理由は、人によって異なります。
単純に忙しくて忘れることもあれば、外出や通院でいつもの生活リズムが変わり、飲む時間を逃してしまうこともあります。
また、薬の種類が増えると、
「これは朝食後だったかな」
「こちらは寝る前だったかな」
「さっき飲んだのはどの薬だったかな」
と、管理が複雑になることも考えられます。
特に朝・昼・夕・寝る前など、薬によって飲む時間が異なる場合は、記憶だけに頼って管理するのが難しくなることもありそうです。
厚生労働省が公開している高齢者の医薬品適正使用に関する指針でも、高齢者は複数の薬を使用する場合があり、生活状況や服薬状況を確認しながら支援することの重要性が示されています。
ただし、飲み忘れがあるからといって、本人の性格や年齢だけが原因とは限りません。
薬を飲むと眠くなる、錠剤が大きくて飲みにくい、薬の数が多くて分かりづらいなど、本人なりの理由が隠れていることもあります。
家族が気付いたときは、すぐに注意するよりも、まず「何か飲みにくい理由があるのかな」と話を聞いてみることが大切なのだと思いました。
薬の飲み忘れを防ぐ、無理なく続けやすい工夫
薬の飲み忘れ防止には、お薬カレンダーやピルケース、スマートフォンのアラームなど、さまざまな方法があります。
けれども、便利そうなものを用意しても、本人が使いにくければ長続きしません。
大切なのは、その人が毎日無理なく続けられる方法を見つけることではないでしょうか。
父のように、薬袋へ日付を書いて線を引く方法なら、特別な道具は必要ありません。
薬袋とボールペンを同じ場所に置き、飲んだらすぐに印を付ける。それだけですが、袋を見れば服薬状況を確認できます。
日付を書くのが面倒な場合は、カレンダーに丸を付けたり、チェック表を冷蔵庫へ貼ったりする方法もあります。
曜日ごとのポケットが付いたお薬カレンダーなら、今日の薬が残っているかを本人も家族も目で確認しやすくなります。
「薬を飲む時間そのものを忘れてしまう」という方には、スマートフォンや時計のアラームも役立つかもしれません。
日本薬剤師会が提供する電子お薬手帳にも、服薬時間を知らせるアラーム機能があります。スマートフォンの操作に慣れている方なら、飲み忘れ防止の選択肢の一つになりそうです。
薬を毎日の習慣と結び付ける方法もあります。
朝食を食べたあと、歯を磨いたあと、夜のお茶を飲む前など、普段必ず行うことと一緒にすると、薬だけを思い出そうとするより続けやすい場合があります。
ただし、薬によっては食前、食後、就寝前など、決められた飲み方があります。生活習慣と組み合わせる場合も、薬剤師に確認してから決めると安心です。
薬の種類が多く、本人だけで分けることが難しい場合は、薬局に相談する方法もあります。
日本薬剤師会では、飲み忘れや飲み間違いを防ぐため、1回に飲む薬を一つの袋にまとめる「一包化」などの対応が行われる場合があると案内しています。複数の医療機関を受診している方は、かかりつけ薬局を決めて薬の情報をまとめて確認してもらう方法もあります。
一包化が適しているかどうかは、薬の種類や保管方法によっても異なるため、まずは医師や薬剤師に相談するのがよさそうです。
離れて暮らす家族にもできる服薬管理のサポート
親と離れて暮らしていると、毎日そばで薬を確認することはできません。
それでも、電話やLINEの会話の中で、
「今日の薬は飲めた?」
「薬はまだ残っている?」
と、ときどき聞くだけでも、飲み忘れに気付くきっかけになるかもしれません。
実家へ行ったときに、同じ薬がたくさん残っていないか、古い薬が混ざっていないかを見ることも一つの方法です。
ただし、残っている薬を家族の判断で捨てたり、飲む量を変えたりするのは避けたほうが安心です。余っている薬がある場合は、次回の診察や薬局で、そのまま医師や薬剤師へ伝えるとよいでしょう。
家族が管理をすべて引き受けてしまうと、本人が負担に感じることもあります。
「忘れないでね」と何度も注意するよりも、
「どの方法なら続けやすそう?」
「お父さんみたいに袋へ印を付けてみる?」
と、一緒に考えるほうが受け入れやすい場合もありそうです。
母にも、父とまったく同じ方法が合うとは限りません。
父は記録することで安心できるタイプですが、母にはお薬カレンダーやアラームのほうが合うかもしれません。
家族だからこそ、本人の性格や生活のリズムに合った方法を一緒に探すことが大切なのだと思います。
薬を飲み忘れたときは、二回分をまとめて飲まない
薬を飲み忘れたことに気付くと、
「次に二回分をまとめて飲めばいいのでは?」
と思うこともあるかもしれません。
しかし、飲み忘れたときの対応は薬によって異なります。
政府広報や厚生労働省でも、薬は決められた用法・用量を守り、分からないことや異常がある場合は医師や薬剤師へ相談することが案内されています。薬の種類によっては、自己判断で急に中止することにも注意が必要です。
飲み忘れに気付いたときは、処方時にもらった説明書や薬袋を確認し、判断できない場合は病院や薬局に問い合わせたほうが安心です。
母のように「一回くらいなら次から飲めばいいかな」と考える方もいると思います。
実際にどう対応するかは薬ごとに異なるため、次に病院や薬局へ行ったときに、「飲み忘れた場合はどうすればよいですか」と前もって聞いておくのもよさそうです。
父の薬袋にある一本の線を見て思ったこと
今回調べてみて、父が薬袋へ日付を書き、一本ずつ線を引いていた方法は、父自身が考えたシンプルな服薬管理だったのだと気付きました。
高価な道具も、難しいスマートフォンの操作も必要ありません。
薬袋の横にボールペンを置き、飲んだら印を付ける。
父にとっては、それが一番忘れにくく、続けやすい方法なのでしょう。
一方で、母のように細かく記録することが苦手な人もいます。
だからこそ、全員に同じ方法を勧めるのではなく、お薬カレンダー、アラーム、チェック表、一包化などから、その人に合うものを選ぶことが大切なのだと思います。
これから両親が年齢を重ね、薬の種類が増えることもあるかもしれません。
そのときに急に家族が管理しようとするのではなく、今のうちから「どんな方法なら続けやすいか」を一緒に話しておけたらと思っています。
父の薬袋に引かれた一本の線を見ながら、こうした小さな工夫の積み重ねが、毎日の安心につながっているのかもしれないと感じました。
今回参考にした資料
・厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」
・厚生労働省「誤解しやすい 薬との付き合い方」
・政府広報オンライン「知っておきたい 薬のリスクと、正しい使い方」
・公益社団法人 日本薬剤師会「医薬分業Q&A」「eお薬手帳」
※本記事は公的機関などが公開している情報を参考に、筆者の家族の経験を交えてまとめたものです。薬の飲み方や飲み忘れた際の対応は、薬の種類や健康状態によって異なります。服薬について分からないことがある場合は、自己判断せず、医師や薬剤師などの専門家へご相談ください。




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